
|
塩竈義弘
しおがまぎこう
大正12年生まれ。佛教大学・龍谷大学文学部卒業。京都府立城陽高校校長を経て、京都文教短期大学では哲学・教育原理を担当。昭和22年、先代の他界により上徳寺住職となる。知恩院文化財保存局長。ライフワークは浄土曼陀羅の研究。 |
|
「世継地蔵」には、子どもさんを願う参拝者が後を絶ちません。子どもは、社会を継ぐ子ども。自然の欲求ではないかと思います。それが、今は、家庭や社会の構造が変わり、子どもを生むのにも、どうやって育てよう、という心配ばかりが頭をよぎるようです。昔なら、周りの経験者が「大丈夫」と支えてくれたんですけどね。いつしか、個人の生活が強調され、個人主義と勝手主義が履き違えられているようです。今、世の中に大切なのは「共生の思想」ではないでしょうか。
あらゆるものに命がある、あらゆるものが仏様になる素質があると拝み合うのが、仏教に流れる思想です。あらゆるものが寄り合って存在しているという「空」の思想。自分のこの体でさえ、この体のどの部分が自分という訳ではなく、心身がすべて寄り合って「自分」になる訳です。そして、周りから支えられているだけではありません。自分もまた周りの何かを支える要素であり、自分の生き方が周りに影響をしているのです。自分の存在が消えれば、そこはカラッポの空間が生じて、大気をも動かす…。そう、自分の存在は自分だけのものではないのです。
京都は、文化財の多い所ですが、寺を初め文化財については、まだ議論の余地があるようです。公共の文化財なのだから、広く公開すべきだという声もありますが、本質は美術品ではなく、信仰の対象。寺にしても、仏像にしても、信仰の対象になり得るには最上級のものでなくてはならない、そんな思いから、一彫一彫、拝むように作ったものだから、美しいのです。観賞する方にも、同じ気持ちが大切だと思うのです。
|
|