このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です
1999.11.7発行 45号
       
 

岡本佳世子
おかもとかよこ

昭和7年生まれ。先代に跡取り息子がなかったため、高等女学校卒業後家業を継ぐ。「頭を下げることを知らへんたら、この商売はできません」とにこやかに語る5代目。


 幼い時から「継ぐのはお前や」と言われ、結婚相手も和菓子ができる人と厳しく決められていました。「なぜ自分はこの世に生まれてきたのか」と、自分の運命に疑問を抱いたことも少なくありませんでした。結局、私は相手に恵まれたと思います。この世界はオギャーと生まれてその空気で育ち、教えてもらうのではなく見て学ぶというものですから、主人はその点不利でした。しかし「俺は人が十年かかるところを五年でやる」と要領よく仕事を覚え、かつ独創的な考えの持ち主でもありました。主人が亡くなってからは、「こんないい商売あらへん」と息子を説得して継いでもらいましたが、「無理して継がせたら伸びひんで」と、いつか人に言われた言葉が今でも胸の奥につかえています…。
 近頃思うことは、なんでもこねくりまわしすぎたらあかんいうことです。まことしやかにしつらえられた雰囲気のお料理屋さんで、凝った細工に巧妙な味付けというのもいいけれど、気軽に素材本来のおいしさを味わえるお店があればなあと感じます。和菓子も同じことがいえます。私の楽しみは、餡の炊きたてを取り分けておいて、それをお茶やコーヒーと一緒にいただくことです。ひねりすぎず素材を生かすこと、それは京都が昔から大事にしてきたことだと思います。
 秋口になると観光に訪れる方が増えますが、京都が本来培ってきたものを存分に満喫して、そして訪れる度に魅力を増す京都であってほしい。店に来られた方には、近所の名所を教えるなど少しでも喜んでいただけるよう努力しています。最近京都で若い人がいろいろなお商売を始めることも多くなりましたが、京都を訪れる人達を心からの親切でもてなしていただきたいと思います。

(かまはちろうほ)
かま八老舗


文化3年(1806)、大宮寺ノ内に御菓子司として創業。昭和2年、3代目が現在地に店を移す。「かま八」の名の由来は、昔釜屋を営んでいたからと伝わる。干菓子のほか、代表的商品として釜をかたどった「茶釜最中」、粒餡を生姜風味のうす皮で包んだ「西陣どらやき」などがある。現在は5代目佳代子氏の息子、隆史氏が6代目として精力的に店を切り盛りする。

〒602
上京区五辻通浄福寺西入
075-441-1061



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